東京藝術大学と東京都美術館が、美術館を舞台にアート・コミュニケータとともにつくるアートを介し、対話を重視したコミニティづくりをはじめて10年が経ちました。
とびらプロジェクト
東京都美術館と東京藝術大学によるアートを介したコミュニティを育むソーシャルデザインプロジェクト「とびらプロジェクト」。2011年のプロジェクトスタートから、2021年で10期を迎えました。毎年、市民からの公募によりアート・コミュニケータ(愛称:とびラー)を募集し、3年の任期中に東京都美術館を舞台に能動的なプレイヤーとして活動します。130名ほどのアート・コミュニケータによって、「とびラボ」と呼ばれる、とびラーが自発的に考えた今までになかった展覧会関連企画やコミュニティー自体の提案が次々と発案され、新たなコミュニティの回路を社会に提案しています。
社会で経験やさまざまなスキルを持った「とびラー」のより豊かで実践的な活動のために、学びと実践のサイクルが設計されています。
学びの場としては、「コミュニティを築く上での基本的な前提を学ぶ基礎講座」や、「さまざまな人が文化財に触れる機会について考えるアクセス実践講座」、「鑑賞を通してヴィジョンを他者と共有することを学ぶ鑑賞実践講座」、「建築とその歴史が作り出す空間のあり方、意義を学ぶ建築実践講座」といった講座を用意しています。それらの基礎と実践を経て、美術館においてアートを介したさまざまな場面にある社会課題について学びながら、とびラーとして活動していきます。講座は一部 Diversity on the Arts Project (通称:DOOR)にも開かれ、相互交流授業をもっています。
また、実践する場としては、東京都美術館で開催される特別鑑賞会やMuseum Start あいうえのとの連動したプログラムを通して学びを実践しています。こどもたちのミュージアム体験に、アートコミュニケーターが並走することで、より深いコミュニケーションが生み出されます。
とびらプロジェクトは、アートを介して誰もがフラットに参加できる対話の場をつくりだし、様々な価値観を持つ多様な人々を結びつけるコミュニティのデザインに、社会の状況を汲みながら日々取り組んでいます。3年の任期を満了した後も、とびらプロジェクトとのつながりを保ちながら、アート・コミュニケータとしてすでに実社会で活躍し続けています。これまでに約400名がアートコミュニケーターとして社会で活動しています。多くのとびラーが、とびらプロジェクトを通して育んだスキルやネットワークを活かしながら、対話のある社会の実現に向けた活動を継続しています。